法事に招かれた際や弔問に伺う際は、お供え物を用意することがマナーです。しかし、どのような品物を用意すればよいのか、包装はどうすればよいのかわからず、戸惑う人は多いでしょう。
今回は、お供え物に適した品物を解説します。お供え物にふさわしくないものと渡し方のマナーもあわせて解説するので、法事や弔問の際にぜひチェックしてみてくださいね。
先祖や故人の仏壇にお供えする際は、五供と呼ばれる考えに基づいたものを選びます
五供とは、仏教において故人があの世で過ごすために役立つとされているもの。「香・灯燭・花・飲食・浄水」の5つがあり、五供に縁のあるものをお供え物に選ぶことが基本です。
ただし、宗教や宗派によって五供の考え方は異なるので注意しましょう。たとえば、神道では五供に代わり神饌と呼ばれるものを供える習慣があります。代表的なものは米・酒・塩などですが、野菜や海産物なども含まれることが特徴です。
キリスト教にはお供えの概念がなく、生花やバスケットフラワーを供えることが主流とされています。故人やご遺族の宗教や宗派を、事前に確認することが大切です。
法事・お盆・お彼岸の時期に用意するお供え物はもちろん、毎日のお勤めで供えるものも、五供の考えをもとに選ぶと間違いがありません。五供に縁のあるものは、以降の項目で詳しく紹介します。
仏前には五供の考えが基本であるため、お菓子や果物などの飲食物や線香がお供えにふさわしいとされています。お供えの贈り物に適した品物を詳しくチェックしてみましょう。
お菓子は、五供のなかの飲食に当たるものです。どのようなものを選んでもよいとされていますが、お下がりとしてご遺族が口にすることを考慮するなら、傷みにくいお菓子を選ぶとよいでしょう。
定番は、落雁や和三盆などの干菓子です。干菓子には蓮や菊の花を象っているものが多く、極楽浄土を連想させます。日持ちして傷みにくい焼き菓子やせんべいなども、長期間お供えする場合に適しているでしょう。
反対に、溶けやすいものや香りが強いお菓子は避けたほうがよいとされています。たとえば、アイス・チョコレート・飴などは、溶けて仏壇を汚してしまう可能性があるでしょう。
仏様は香りを食べるといわれているので、香りが強いものはお供えにふさわしくありません。ニンニクや玉ねぎなどが含まれており、香料が強いお菓子を選ばないようにするとよいでしょう。
線香は、五供の香に当たるお供え物です。飲食物と異なり消費期限がないので、品物に迷ったら選ぶとよいでしょう。お線香の煙は天に向かって上るため、あの世と現世と繋ぐといわれています。
線香には、お供えをするご遺族や拝む人を清める意味もあります。仏様は生臭さを好まないとされているので、線香の香りで清めてから仏壇を拝むとよいでしょう。線香は大きく分けると杉線香と匂い線香の2種類がありますが、仏壇のお供えに使うものは匂い線香です。
匂い線香は、香木系・漢薬系・フローラル系などさまざまな種類の香りがあります。スパイシーな香りや甘い香りなど、それぞれ特徴が異なるので、故人やご遺族の好み、雰囲気を考慮して選ぶとよいでしょう。
線香の香りは、先祖や故人に楽しんでもらう意味合いも込められているので、心安らげる香りを選んでみてください。
ろうそくは、五供のなかの灯燭に当たるお供え物です。線香と同じく欠かせないものであるほか、ろうそくの火が故人を照らす灯りになり、迷わずあの世に行けるように手助けをする意味合いがあります。
拝む人の心の闇や煩悩を照らし出して取り除く意味もあるので、悲しみの最中にいる遺族に対する思いやりを示せるでしょう。近年では花や野菜を象ったり描いたりしたものや、お酒やお菓子のような見た目のろうそくが登場しています。
美しいろうそくや凝ったろうそくは、ご遺族の心を晴れやかにしてくれることでしょう。故人の好きだったものをお供えしたい気持ちに寄り添うこともできます。
五供でも花とあるとおり、花は仏壇に彩りを添える品物です。仏壇に花を供えることは、花のように美しい心で仏様に近づくことを表しています。
とはいえ、生花は水換えの手入れがかかり寿命が短いので、お供え物として用意するならフラワーアレンジメントやプリザーブドフラワーがおすすめです。
フラワーアレンジメントは1日に1回程度を目安に、スポンジに水を注ぐだけでお手入れができ、置くだけで飾れるので花瓶がいりません。
プリザーブドフラワーは水やりが不要で手入れの負担がかからないうえに、寿命が約1〜2年と長く美しい姿を保てるので、長い期間に渡り仏壇に華やかさを彩ります。
一方で、トゲがある花やツルがある花は、お供えにはふさわしくないとされているので要注意。トゲを持つバラやアザミは血を流すことを連想させるので、仏事において避けることがマナーです。
ツルがあるクレマチスやスイトピーは、絡みついて極楽浄土に行けず故人が成仏できないと捉える人もいるため、避けたほうがよいでしょう。
果物は五供のうち飲食に当たり、賞味期限が長く常温でも傷みにくいことからお供え物に選ばれています。仏教において魂の形は丸いとされているので、とくに丸い形の果物がお供え物に適しているでしょう。
果物を選ぶ場合は、旬のものを用意するとご遺族に喜んでいただけます。
一方で、季節のものであってもいちごや桃、カットフルーツは傷みやすいので控えたほうがよいでしょう。
果物を贈る際は、奇数が好ましいとされています。偶数は割り切れる数字であり縁が切れることを連想させ、故人との別れの苦しみを思い出させるためです。4や9は「死」「苦」に繋がるので、4個セットや9個セットも避けましょう。
カゴ盛りされている果物なら、他家へ贈るお供え物にふさわしいのでおすすめです。ただしカゴはなくてもよいとされているので、状況に応じて選びましょう。
飲み物は、五供のなかで飲食や浄水に当たるものです。仏様の喉を潤し、お供えする人の心を洗い清める意味が込められています。
飲み物をお供えする場合は、故人が好きだったお茶・コーヒー・お酒を用意するのが定番です。ただし、ご遺族にお酒を好む人がいない場合は、処分する手間をかける恐れがあるので事前に確認しておきましょう。
地域の宗派や習慣によっては、酒類のお供えを好ましくないとすることもあります。仏教の戒律には酒を禁止する飲酒戒があるため、お酒を供えるべきではないと考える人もいる点に注意しましょう。
贈り物としてお供え物を用意するときは、渡すときのマナーもチェックしておきましょう。ここでは、お供え物を包む掛け紙や渡すときの作法を解説します。
お供え物を用意するときは、のしが印刷されていない無地の掛け紙を使用することが基本です。のしとは、水引の右上に印刷される熨斗鮑を象った飾りのこと。神聖さや不老長寿の象徴であり、お祝いごとが続くよう願う意味が込められています。
のしが描かれた掛け紙であるのし紙は、結婚や出産などお祝いごとの贈答品を包む際に用いられるため、弔事には適していません。
掛け紙は、包装紙の外側にかける方法と、品物自体にかけて上から包装紙で包む方法の2パターンがあります。
手渡しの場合は包装紙の外側にかけて、渡したらすぐに見えるようにしましょう。郵送の場合は品物にかけて上から包装紙で包み、掛け紙が汚れないようにすることが基本です。
お供え物の水引の色は、黒白や黄白の結び切りが一般的です。黒白の水引は通夜や葬儀のお供え物に用いるものとして、全国的に使用されています。
一方で、関西地方では黄白を用いることが多く、地域によって慣習が異なるため注意しましょう。四十九日までは黒白、四十九日以降の法事は黄白を用いるケースもあります。迷う場合は、葬儀社のスタッフや地域の風習に詳しい人に相談してみてください。
なお、神式のお供え物には黒白か双銀の水引を使用します。
水引がいずれの色であっても、お供え物に用いる水引の結び方は結び切りが基本です。簡単にほどけない結び切りは、「悲しみは一度限り」という意味が込められています。
反対に何度でも結び直せる蝶結びは、出産祝いや新築祝いなどの何度あっても好ましいお祝いごとにのみ用いられると覚えておきましょう。
お供え物を用意するときの表書きは、「御供物」や「御供」と記入することが一般的です。
表書きとは、贈り物の目的を表すために、掛け紙の水引より上部分に入れる文字のこと。仏式の場合は「御供物」「御供」「御仏前」「御佛前」と入れることが多いでしょう。神式では「御供物」「御供」「奉納」「奉献」などの言葉が入れられます。
表書きの文字は、4文字にすると「死」を連想させるため注意が必要です。「御供え物」のように送り仮名を入れて4文字にならないように注意しましょう。
表書きの下部分には、差出人のフルネームを入れます。夫婦で贈る場合は夫の名前を入れて、左隣に妻の下の名前を書きましょう。
3名までの連名で出す場合は、もっとも年齢や立場が上の人の名前を右から記載します。4名以上の連名で贈る場合は、全員の名前を入れずに「有志一同」「社員一同」などの形でまとめましょう。全員の名前を入れたいなら、フルネームを別紙に記載して渡してください。
お供え物を渡すタイミングは、施主に挨拶をしたときです。法事に呼ばれて参列するのであれば、会場の入口や親族控室などで施主に挨拶をする際に渡しましょう。
法事を自宅で執り行う際や弔問時は、玄関で出迎えられた際に渡すことが一般的です。故人の遺影にしっかり挨拶してから渡したい場合は、仏壇へ線香を上げて少し落ち着いてからお供えを渡しても問題ないとされています。
ただし、仏前にお供え物を勝手に供えることはマナー違反に当たるため、必ず施主やご遺族に一度渡してください。
お供え物を施主に渡すときは、袋から取り出し「御仏前にお供えください」とひとこと添えて渡しましょう。ひとこと添えることでお供え物であることがわかるため、どのような贈り物なのか施主やご遺族を混乱させてしまうことを防げます。
持ち運びに使って空になった紙袋は、破棄の手間がかかるので施主やご遺族に渡さず自分で持ち帰りましょう。紙袋をお渡ししないのであればそのまま持ち運んだほうがよいと考える人もいますが、お供え物の汚損を防ぐために紙袋や風呂敷は欠かせません。
法事や弔問に車で行く際も、お供え物は一度紙袋に入れ、お渡しするタイミングではじめて取り出すように心がけましょう。
お供え物の相場は、3,000〜10,000円程度です。相場は幅広く設定されていますが、故人との関係性により変動します。
故人と親しかった場合は5,000〜10,000円ほど、あまり付き合いが多くなかった場合は3,000〜5,000円ほどの品物を選ぶとよいでしょう。
お供え物の値段に明確な決まりはありませんが、高価すぎるものはご遺族に気を使わせてしまいます。一方で、低すぎると気持ちが伝わりにくく、失礼にあたるので注意しましょう。
地域の慣習や親族同士の決まりによって相場の考え方が異なる場合もあるため、悩んだ場合は地域に詳しい人や親族に相談してみてください。
一見、五供に当たると考えられるものでも、実はお供えにふさわしくない品物もあるので注意しましょう。以下では、お供えに避けるべき品物を紹介します。
殺生を禁じている仏教では、肉や魚のお供え物はふさわしくありません。すべての命は平等であり人間の都合で殺生を行うべきではないという考えがあるので、肉や魚も命を宿すものとしてお供えには不向きです。
傷みやすい生ものはもちろん、ソーセージ・練り物・缶詰などの加工品でも、お供え物として贈ることは控えましょう。
故人が肉や魚をとくに好んでおり生前よく口にしていたため、どうしてもお供え物にしたい場合は、事前にご遺族の了承を得ましょう。調理した肉や魚とご飯を一緒に、短い時間だけお供えするのであれば問題ないと判断するご遺族もいます。
香りがきつい食べ物や花なども、お供え物には適していません。仏教では、刺激的な香りのものは修行の妨げになると考えられています。仏様は香りを食べるという考えもあるので、きつい香りを放つものはほかのお供えや線香との相性が悪いでしょう。
香りが強いため避けたほうがよいものは、にら・ニンニク・パクチー・マンゴー・ドリアンなどを含む食べ物や、ユリ・クチナシ・キンモクセイなどの花です。
よい香りとされるものであっても、ご遺族が好まない香りやペットがいるご家庭では迷惑をかける可能性があるので控えましょう。
棘や毒がある花は、流血や死を連想させるためお供えには向いていません。棘がある花は、バラ・サボテン・アザミ・ザクロ・柊など。改良によって棘がない品種もありますが、お供え物に選ぶ場合はご遺族の意向を確認しましょう。
毒がある花は、スズラン・彼岸花・朝顔・レンゲツツジ・チューリップなどです。水仙も有毒ですが、仏壇にお供えする習慣がある家庭や地域もあるので、故人が好んでいた場合はご遺族に相談してみてください。
お供え物で避けたほうがよいものは、日持ちしにくく傷みやすい物です。食べ物は、仏前にお供えしたあとしばらくしてからお下がりとしてご遺族がいただくことが多いもの。
日持ちしにくい物の場合は消費期限を気にしなくてはいけなくなったり、すぐに傷んで食べられなくなったりします。
たとえば、ケーキや大福などの生菓子は、当日中に食べなければいけないものが多い傾向にあります。お供えに向いている品物として紹介した果物も、種類によっては避けたほうが無難です。いちご・みかん・バナナなどは、傷みやすく日持ちしない物とされています。
ただし、故人に喜んでもらいたいという気持ちから、生前好んでいたものをお供えしたいと考える人も多いでしょう。生菓子や日持ちしない果物を用意したい場合は、理由を伝えたうえでご遺族の許可をとるよう心がけてください。
常温で保存できない物も、お供え物に選ばないよう気をつけましょう。仏壇は室内に配置されているため、室温に保たれているケースがほとんどです。常温で保存できない物は、仏壇を汚す可能性があります。
たとえばチョコレートや飴などは、室温によっては溶ける可能性があるでしょう。アイスクリームやシャーベットなど冷凍で保存するものは、短時間であってもお供えに適していません。
常温で保存できないものの故人が好きだった物をお供えしたいのであれば、品物を象ったろうそくをお供えすると喜ばれるでしょう。
お供え物は五供の考えに則り、お菓子や果物などの飲食物・線香・ろうそく・花を用意しましょう。
ただし、肉や魚などの殺生を連想させるものや香りがきついものなどは、仏教の考えにふさわしくないとされており、ご遺族の負担になる可能性が高いため控えた方が無難です。
お供え物を用意するときは、「御供物」と表書きを記すことなど、基本的なマナーを押さえて、故人を悼む気持ちを伝えましょう。
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